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AI実務 — work
資料の骨子を素早く作る
プレゼン資料や報告書を作る際、章立て(アウトライン)を決める段階で手が止まる経験は少なくありません。「何から書けばよいか」「どの順番で話を組み立てるか」という悩みは、ベテランのビジネスパーソンでも起こります。白紙のスライドを前に考え続けても、作業が前に進まない時間だけが積み上がります。
AIを活用すると、章立てのたたき台を数分で用意できます。重要なのは「完成した資料をAIに書かせる」のではなく、「骨子だけを出力させて、自分の経験・知識で肉付けする」という役割分担です。40代のマネジャーや営業職・事務職の方が積み上げてきた業務知識は、AIが出した骨子に命を吹き込む材料になります。AIにできないのは「自社の事情を知った判断」であり、そこは人間の出番です。
この記事では、ChatGPTを使って資料の章立てを作る最小手順を順を追って説明します。特別な技術は不要です。ブラウザでChatGPTにアクセスできる環境があれば、今日から実践できます。
結論:「目的・読者・枚数」の3点を伝えると章立てのたたき台が出てくる
ChatGPTへの指示(プロンプト)に「この資料の目的」「読む相手(読者)」「ページ・スライド枚数の目安」の3点を含めると、実務で使えるレベルの章立てが出てきます。最初から完璧な章立てを求める必要はありません。AIが出した骨子をたたき台として、自分の判断で修正・追加するプロセスが効率的です。
この3点セット(目的・読者・枚数)を意識するだけで、「漠然とした質問に対する漠然とした回答」というよくある失敗を回避できます。全体の流れは「① プロンプトを入力する → ② 章立てを確認・修正する → ③ 必要に応じて各章を深掘りする → ④ スライドや文書に落とし込む」の4ステップです。
| 3点セット | 具体的な例 | なぜ重要か |
|---|---|---|
| 目的 | 来月の経営会議でプロジェクト予算の承認を得る | 章立ての「ゴール」が定まる |
| 読者 | 部長・役員4名(業務詳細は知らない) | 情報量・専門用語の深さが変わる |
| 枚数 | PowerPointで10枚以内 | 章数と各章の密度が決まる |
手順1:なぜ「章立て」からAIを使い始めるのか
資料作成の作業は、大きく分けると「構成を考える(章立て)」「各章の内容を書く」「見た目を整える」の3段階です。このうち最も判断コストが高いのが最初の「構成を考える」段階です。ここで迷うほど、後工程全体が遅れます。逆に言えば、章立てさえ固まれば後の作業は大幅にスムーズになります。
AIは「構成の候補を瞬時に複数出す」作業が得意です。一方で、「自社の事情」「読み手の役職や温度感」「過去のいきさつ」といった文脈はAIには分かりません。AIに骨子を出させて、業務知識を持つ人間が判断・修正するという役割分担が最も効率的です。
40代のビジネスパーソンは現場知識・人間関係・過去の失敗経験という「文脈」を豊富に持っています。AIが出した章立てを見れば「この章は不要」「ここに〇〇を追加する」という判断がすぐできます。ゼロから考えるより、たたき台を修正する方がはるかに早く完成に近づきます。これは20代には真似できない強みです。
また、「何を書くか」を考えるのではなく「この章立てでよいか」という問い方に変わることで、思考の負荷が大きく下がります。白紙から考え始めるストレスを、AIへの問いに変換するだけで作業の流れが変わります。
手順2:ChatGPTにアクセスして最初の準備をする
ChatGPT(OpenAI公式)をブラウザで開き、新しいチャットを開始します。アカウント登録が必要ですが、無料プランでも章立て作成は実践できます。公式サイトで最新のプランや機能の情報を確認してください。
最初のプロンプトを入力する前に、以下の3点をメモしておくと入力がスムーズです。紙にメモするだけで構いません。
- この資料の目的(承認を得る・状況報告・提案・社内研修など)
- 読む相手の属性(役職・業務知識の深さ・意思決定権の有無)
- 資料のボリューム感(スライド枚数・ページ数・口頭説明の有無)
これら3点がそろった上でプロンプトを入力すると、最初の出力から実務で使えるレベルの章立てが得られます。逆に、この準備なしに「資料を作って」と入力すると、どの状況にも当てはまる教科書的な章立てが出てきます。
なお、ChatGPTへの入力内容はOpenAIの利用規約の範囲内で扱われます。社内の機密情報や個人情報を入力する場合は、所属する組織のAI利用ポリシーを事前に確認することが大切です。
手順3:「目的・読者・枚数」を揃えたプロンプトを書く
以下はプロンプトの基本パターンです。〔 〕の部分を自分の状況に合わせて書き換えてください。コピーしてそのまま使えます。
以下の条件でプレゼン資料の章立てを作ってください。 【目的】〔例:来月の経営会議でDX推進プロジェクトの予算承認を得る〕 【読者】〔例:部長および役員4名。日常業務の詳細は知らない〕 【枚数】〔例:PowerPointで10枚以内〕 各章のタイトルと、その章で伝えるべき内容を1〜2文で示してください。
「各章で伝えるべき内容を1〜2文で示してください」という一言を加えると、章タイトルだけでなく各章の主旨も出てきます。これにより、後で内容を書き込む際の方針が明確になります。
目的欄は「〇〇を報告する」ではなく「〇〇の承認を得る」「〇〇を決断してもらう」のように、読み手の行動(Action)を起点に書くと、より適切な構成が出てきます。資料の目的は「情報を伝える」だけでなく「読み手に何かをしてもらう」ことが多いためです。
状況別プロンプト例
状況によってプロンプトを微調整すると、より実務に合った章立てが出てきます。以下にいくつかのパターンを示します。
例1:月次報告(社内向け)
以下の条件でプレゼン資料の章立てを作ってください。 【目的】今月の営業実績を上長に報告し、来月の施策への合意を得る 【読者】営業部長(数字の背景事情は把握している) 【枚数】PowerPointで8枚以内 各章のタイトルと、その章で伝えるべき内容を1〜2文で示してください。
例2:新規提案(役員向け)
以下の条件でプレゼン資料の章立てを作ってください。 【目的】顧客管理システムの刷新を役員会議で承認してもらう 【読者】役員5名(業務詳細は知らないが投資対効果の数字には敏感) 【枚数】PowerPointで15枚以内 各章のタイトルと、その章で伝えるべき内容を1〜2文で示してください。
例3:社内研修資料
以下の条件でプレゼン資料の章立てを作ってください。 【目的】新入社員に顧客対応の基本フローを習得させる 【読者】入社1〜3か月の新入社員(業務経験ほぼなし) 【枚数】PowerPointで20枚以内、演習2回を含む 各章のタイトルと、その章で伝えるべき内容を1〜2文で示してください。
手順4:出力された章立てを確認・修正する
ChatGPTが章立てを出力したら、そのまま採用するのではなく、以下の観点で確認します。AIが出した骨子はあくまでたたき台であり、業務文脈を踏まえた修正が最終的な品質を決めます。
- 章の順序:読み手が自然に理解できる流れになっているか
- 章の過不足:自社固有の事情で追加・削除が必要な章はないか
- 各章の主旨:その章で「何を」「なぜ」伝えるかが明確か
- 枚数バランス:指定した枚数に対して章数が多すぎ・少なすぎないか
確認の結果、修正が必要な場合はChatGPTへの追加指示で対応します。「3章と4章を入れ替えて」「〇〇という章を追加して」「全体を8章から6章に絞って」のような自然な日本語で指示できます。
修正を指示した後、もう一度同じ観点で確認します。このサイクルを2〜3回繰り返すと、実務で使える章立てが整います。完璧を目指して何度も繰り返すより、「これで中身を書き始められる」レベルで止める判断が重要です。8割の出来でたたき台として動かす方が、結果的に早く完成します。
手順5:深掘りプロンプトで各章の内容を展開する
章立てが固まったら、次のステップとして各章の内容を展開できます。全章を一度に展開しようとするとAIの出力が薄くなりやすいため、1章ずつ深掘りするのが効果的です。
先ほど作った章立ての「〔章タイトル〕」の章について、スライド2枚分の内容を展開してください。 条件: ・箇条書き3〜5点で要点を整理する ・専門用語は使わず、役員にも分かる言葉で書く ・数字や具体例があれば〔枠〕で示してください(後で私が実数字を入れます)
「〔枠〕で示してください」と指示すると、AIは「〔売上金額〕」「〔前年比〕」のような形で、後から実数字を入れる場所を明示してくれます。自社の内部データをAIに入力せずに活用できるため、情報管理の観点でも安心できる方法です。
展開した内容が「少し違う」と感じた場合は、「〇〇の観点をもう少し強調して」「〔数字の枠〕を増やして」「より簡潔にして」などの追加指示で修正できます。
手順6:章立てをスライドや文書に落とし込む
章立てと各章の内容が整ったら、実際のスライドや文書に書き込む段階に移ります。この段階ではAIの出力をそのままコピーするのではなく、以下の作業を自分で行います。
- 自社の実数字・事例・固有名詞を〔枠〕部分に入れる
- 社内の言葉遣い・略称・表記ルールに統一する
- 図表の種類(棒グラフ・フロー図・比較表など)を選択する
- 前後のスライドとの一貫性(メッセージの流れ)を確認する
章立てと各章の骨子がAIによって整っていると、この「肉付け作業」が格段に進めやすくなります。「何を書くか」が決まっているため、「どう書くか」の表現に集中できます。
スライドの見た目(デザイン・色・フォント)は、PowerPointやKeynoteのテンプレートを使う段階です。この段階でAIを使う場合は「このスライドタイトルをより簡潔にして」「この箇条書きを3点に絞って」など、文言の調整に絞って活用するのが効率的です。
職種別の活用ポイント
事務職・営業職・マネジャーそれぞれで、資料の目的と読者が異なります。プロンプトを書く際の職種別ポイントを整理します。
事務職の方へ
事務職の方が作る資料は、「手順書・マニュアル」「定例報告書」「会議の議事録まとめ」が多いです。これらの資料は読み手が「知識を習得する・確認する」ことを目的としているため、章立てには「手順の順序」と「各手順の目的」を明示するとAIが適切な構成を出しやすくなります。
以下の条件でマニュアルの章立てを作ってください。 【目的】新しく配属されたパート社員が経費精算の申請を自分でできるようにする 【読者】PC操作に慣れていない40〜50代のパート社員 【分量】A4で5ページ以内 各章のタイトルと、その章でできるようになること・覚えることを1〜2文で示してください。
営業職の方へ
営業職の方が作る資料は、「顧客向け提案書」「商談後のフォローアップ資料」「社内の活動報告」が中心です。提案書の場合、読み手の課題意識と自社ソリューションの関係を章立てに反映させることが重要です。プロンプトの「目的」欄に「顧客のどんな課題を解決するための提案か」を加えると、よりシャープな章立てが出てきます。
以下の条件で顧客向け提案書の章立てを作ってください。 【目的】倉庫管理の非効率(在庫の二重入力・ミス多発)を解消する物流システムを提案し、次回打ち合わせの機会を得る 【読者】物流部門の責任者(現場の課題はよく知っているが、IT投資の決定権は持たない) 【枚数】PowerPointで8枚以内 各章のタイトルと、その章で伝えるべきポイントを1〜2文で示してください。
マネジャーの方へ
マネジャーの方が作る資料は、「チームの活動報告」「部門間の調整・合意形成」「経営層への説明」など、多様な読み手を想定するものが多いです。特に経営層向けの資料は「結論から先に見せる(PREP構造)」が求められます。プロンプトに「結論から始める構成で」と加えるだけで、それに適した章立てが出てきます。
以下の条件でプレゼン資料の章立てを作ってください。 【目的】来期の組織改編案を経営会議で承認してもらう 【読者】経営層5名(詳細より投資対効果と実現可能性を重視する) 【枚数】PowerPointで12枚以内 【構成の方針】結論(改編案)を冒頭に示し、その後に根拠と実行計画を続ける 各章のタイトルと、その章で伝えるべき内容を1〜2文で示してください。
よくあるつまずきと対処法
章立て作成でAIを使い始めた際によくあるつまずきと、その対処法を整理します。あらかじめ知っておくだけで対処が楽になります。
指示が漠然としすぎて使えない章立てが出る
「プレゼン資料の章立てを作って」とだけ入力すると、汎用的すぎる章立てが出てきます。対処法は「目的・読者・枚数」の3点を必ず加えることです。プロンプトに情報が少ないほど、出力も一般的になります。情報を整理してからプロンプトを入力する習慣をつけると、出力の質が安定します。
最初の出力が気に入らなくてやり直しを繰り返す
最初から理想的な章立てを求めてゼロからやり直しを繰り返すと、時間がかかります。「8割正解なら修正で対応する」という判断基準を持つと効率が上がります。「〇〇の章を削除して」「〇〇を追加して」という具体的な修正指示の方が、ゼロから作り直すより速く完成に近づきます。
自社の内部情報をそのまま入力してしまう
売上・顧客名・未公開の社内プロジェクト情報をAIチャットに入力することは、情報セキュリティの観点から注意が必要です。「〔売上金額〕」「〔顧客名〕」のような枠組み形式でプロンプトを作り、実データは自分で後から入力するルールを検討してください。所属する組織のAI利用ポリシーを事前に確認することが大切です。
AIの出力をそのまま提出してしまう
AIが出した章立てをそのまま提出すると、自社固有の事情が抜けた「教科書的な資料」になりやすいです。AIの出力はあくまでたたき台であり、業務知識を持つ自分が最終判断者です。「AIを使って効率よく作った」という位置づけで、最後は自分の目で確認・修正することが重要です。
共通注意点
- 情報セキュリティの確認:所属する組織のAI利用ポリシーを事前に確認してください。機密情報・個人情報・未公開の社内データをAIチャットに入力する前に、利用規約と社内規則の確認が大切です。
- AIの出力は事実確認が必要:ChatGPTは事実と異なる内容(いわゆる「ハルシネーション」)を出力することがあります。数字・固有名詞・法令・社内制度などは、公式情報で確認してください。
- 最終判断は人間が行う:AIが出した章立ては候補です。読み手の反応・社内の事情・タイミングを踏まえた最終判断は、業務知識を持つ自分が行います。
- プロンプトの記録を残す:うまくいったプロンプトはメモしておくと、次回同じ状況で再利用できます。自分だけのプロンプトテンプレートが蓄積されると、作業速度が上がります。
- ChatGPTの機能は変わる:ChatGPTのインターフェースや機能は随時更新されます。公式サイトで最新の情報を確認してください。
ChatGPTの料金・機能を公式で確認したい方へ
ChatGPT公式の料金・機能ページを開くまとめ:今日から使える最小手順の整理
この記事で説明した手順を整理します。
| ステップ | 作業内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 章立てから始める理由を理解する | 構成が決まれば後工程が速くなる |
| 2 | 目的・読者・枚数の3点をメモする | この情報がプロンプトの質を決める |
| 3 | プロンプトを入力する | 「読み手に何をしてもらう資料か」を起点に書く |
| 4 | 出力を確認・修正する | 8割正解なら修正で対応する |
| 5 | 必要な章を深掘りする | 1章ずつ、〔枠〕で数字の場所を確保する |
| 6 | スライド・文書に落とし込む | 実数字・固有名詞は自分で入れる |
AIは「何を書くか」の候補出しが得意で、「これで合っているか」の業務判断は人間が得意です。この役割分担を意識すると、40代のビジネスパーソンが積み上げてきた業務経験をAIと組み合わせて活かせます。章立てという「最小の入口」から始めることで、AI活用の手応えを早い段階で感じられます。
次の一歩
- AI×仕事術のハブページ:40代が業務でAIを活用する入口はこちら
- 40代がAIを学ぶ際の最初のステップ:何から始めるか迷ったら
- AI学習サービスの選び方:目的別に整理した一覧
- AI学習にかかるコストの考え方:費用感と優先順位の整理
- Reskill40について:誰が・何のために運営しているか
出典・参考情報
- OpenAI ヘルプセンター(ChatGPT):https://help.openai.com/en/collections/3742473-chatgpt
- Anthropic(Claude公式):https://www.anthropic.com